バンクーバー新報のバックナンバー、日系博物館へ

寄贈されたバンクーバー新報を、長期間保存のためアーカイブ用保管ボックスに入れて整理する、NNMCCのコレクションマネージャー、リサ・ウエダさん Photo Courtesy of Nikkei National Museum & Cultural Centre
寄贈されたバンクーバー新報を、長期間保存のためアーカイブ用保管ボックスに入れて整理する、NNMCCのコレクションマネージャー、リサ・ウエダさん Photo Courtesy of Nikkei National Museum & Cultural Centre

 バンクーバー新報の紙版41年分が日系文化センタ―博物館に寄贈された。

 1978年の創刊以来、紙版のバンクーバー新報はメトロバンクーバーやカナダの日系社会のニュース・できごとを伝えてきた。日系社会とともに歩んできたバンクーバー新報は、歴史的にも文化的にも貴重な資料でもある。

 バンクーバー新報創刊号は、バンクーバー港周辺に停泊している日本の貨物船が無線で受信する日本のニュース通信を分けてもらい、情報をまとめてガリ版刷りで印刷した。その後、カナダのニュースやローカルの情報や掲示板の掲載も始めた。

 紙面は時代を映し出す鏡でもあった。1980年頃は庭師やウエートレスの求人広告が多かった。当時のカナダは「グローバル経済の中での競争力強化」という名目で経済移民の拡大に力を入れていた。1985年になると多様文化を宣伝する政府からの広告が入るようになった。

 1986年にはバンクーバー国際交通博覧会(EXPO86)が開催される。新報では日本をはじめとする約90のパビリオンを紹介した。バブル景気の頃は日本人の海外旅行ブームが起きる。カナダを訪れる日本からの旅行者の急増に対応して、日本の旅行社が多数、バンクーバー支店を開設することになった。土産物店も増え、新報の求人広告もウェイター、ウェイトレスだけでなく、土産物店のセールスクラーク、ツアーガイドの求人広告も増えた。

 2011年に起こった東日本大震災のときには、新報でも「がんばれ日本」キャンペーンを企画し、応援広告スペースを提供して、1万3340ドルを集め、カナダ赤十字を通じて寄付した。さらに、バンクーバーで開催されたさまざまなファンドレイジングイベントのレポートも行い、サポートに努めた。

 紙版のバンクーバー新報を発行していたバンクーバー新報社の津田佐江子社主は「寄贈を受け取ってくれた日系博物館にまずお礼を申し上げます。おかげでコミュニティのみなさまにお役に立てることができ光栄に思います」と語った。

 一方、日系文化センター・博物館のケーラ後新門事務局長は「バンクーバー新報社から寄贈を受けた新聞や資料は、日系文化センター博物館の最大の出版物コレクションとなりました。新たな収蔵品は、多様な物語を保存し、日系カナダ人の歴史と遺産を、世代を超えて守り、つないでいくという博物館の目標を支援するものです」と述べた。

 バンクーバー新報は、紙版は2020年4月30日号で廃刊となったが、その後、7月1日からオンラインでニュースや情報の発信を続けている。

(取材 西川桂子)

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