「少し上等な浴衣を着物のように装う」

カナダde着物 

第1話 季節*夏~初秋

 マジョリティーが今までない物を残して来たのは世の常ですが、和服の世界でも同じようです。どんなに邪道な物も多くの人気を得れば、王道となり市場に広まります。

 昨今、浴衣を着物(*)のように愉しむ方々が増えて来ました。

 浴衣は元々はバスローブのように湯上りに軽く羽織るものでしたが、その後、サマーワンピースのように気軽なお出掛用となり、今は小紋や付け下げに使う名古屋帯を合わせられる着物レベルまで昇級してまいりました。そして、まだまだ進化の過程の中にあるようです。

 和服のルールの多くは、和装学校や呉服業界の人たちが決めてきたと聞いたことがあります。でも、それらは時代が変ればルールも徐々に変るのが実際の所でして、私が学んだ頃とは違うなと感じる時があります。その為か年代により認識がかなり差が出てしまいました。代表的なのが浴衣です。 “浴衣論争”というものがSNS上で多く見られます。

 「バスローブの役目の浴衣を街に着ていくの!?」「いや、もはや浴衣は着物と同じおしゃれ着よ」「じゃあ、せめてお茶室には着て来ないで」などなど、それぞれの言い分があります。

 論争の最後には、「出掛ける相手先や主催者のルールに従いましょう。ただ、浴衣や着物はファッションであり、常識もルールも変化して行くものである」という結論に至る事が多いようです。

(*)「和装」「和服」「呉服」「着物」「浴衣」の違いですが、ここでは和装、和服、呉服を総称として呼び、その中に着物(長襦袢の上に着る素材)と浴衣(肌襦袢や下着の上に着る素材)があると設定いたしました。

2020年の夏~初秋、コナの考える浴衣の着方
“素材の格×目的で着分けよう!”

「従来通り*カジュアルな浴衣」 

 低額の“化学繊維”や“綿”の浴衣は、肌襦袢(下着)の上に浴衣を着て、帯は半幅で素足に下駄を履きます。目的場所は、カジュアルなお祭りや自宅や友人宅でのホームパーティーなどいかがでしょうか?

(カナダでは少ないですが、お座敷に上がる時は足袋をご持参することをお勧め致します。素足で下駄で外を歩きますと、かなり足の裏が汚くなります。お相手先へ気遣いですね。)

カナダで楽しむ着物の世界。白地浴衣 木綿 藍草木染め リバーシブル半幅帯 ナイロン製
白地浴衣 木綿 藍草木染め リバーシブル半幅帯 ナイロン製。Photo © コナともこさん

「ちょっとフォーマル*おしゃれ着浴衣」  

 素材は少し高級な“絞り” “綿紅梅”“絹紅梅” “綿絽”がとても素敵です。絽の半襟をつけた長襦袢を着て少しフォーマル感を出します。帯は半幅帯にしてお好みで帯締めをします。名古屋帯の場合は帯上げと帯締めが必要です。足元は足袋に草履になります。

 目的場所は、浴衣のみの場合より広がり、夏のフォーマルパーティー、お茶会、演劇鑑賞、高級レストランなどなど、殆どの夏のお出掛けに対応できるのではないでしょうか?

カナダで楽しむ着物の世界。夏のおしゃれ着*アンティーク 綿絽浴衣 /リバーシブル半幅帯 流水 帯留トンボ 
夏のおしゃれ着*アンティーク 綿絽浴衣 /リバーシブル半幅帯 流水 帯留トンボ Photo © コナともこさん

 おしゃれ着浴衣のメリットは低額でお手入れが楽だということです。基本的に浴衣ですので高級素材でもブランドのワンピースぐらいの値段で新品が購入できます。そして、自宅で洗える浴衣が多くクリーニング代も安めです。

「地球温暖化で求められる昔から残る麻素材*縮(ちぢみ)」

 近年見かけますのが、新潟地方の小千谷縮(おじやちぢみ)です。母がよく話してましたが、昔はちぢみの夏の寝具が多くあったそうです。暑い日本の夏ですから、涼しく感じる素材の商品が増えているようですね。汗をかいても丸洗いできる縮、“越後縮、小千谷縮、能登縮、明石縮”などが有名だそうです。

カナダで楽しむ着物の世界。夏のおしゃれ着*黒地絞り浴衣/木綿製  リバーシブル半幅帯 荒磯
夏のおしゃれ着*黒地絞り浴衣/木綿製  リバーシブル半幅帯 荒磯 Photo © コナともこさん

2020年 特別展 きものKIMONO 東京国立博物館にて」

 2020年6月30日~8月23日まで東京で開催されてました「きものKIMONO」展ですが、ネット上で行かれた方々の感想を読みますと、かなり見応えのある素晴らしい展示だったとのことでした。

 今年初頭からのコロナ禍でカナダから日本へ行く事が難しくなり、私も含め特別展へ行くことを諦めた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 またいつか、こちらの特別展が開催されることを願います。
 特別展の詳細はホームページからご覧下さい。https://kimonoten2020.exhibit.jp/

カナダで楽しむ着物の世界のkona tomoko コナともこさん

コナともこ
 アラフィフの自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
 10年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。
 カナダ人の夫+高校生と大学生3人娘+老犬1匹と暮らしております。バンクーバー近郊在住。 

和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/
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